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メンタル不調回復のカギは“休息力”を高めること 産業医が語る「自律神経状態の把握」の重要性【後編】

日々のストレスによって、自律神経のバランスが乱れ、心身の不調を感じることは誰にでも起こり得ます。そうした“見えない不調”に気づくきっかけとして、AIによる電子瞳孔計「Mecara」が注目されています。
本記事は、脳神経外科・睡眠診療・精神科・心療内科での臨床経験を持ち、産業医として社会人のメンタルヘルスケアも行う種市摂子先生にお話を伺う企画の後編です。前編(リンク)では、うつ病や自律神経の関係、不調の早期発見の重要性についてお話しいただきました。後編では、不調を発見してからどのような対処をするべきか、効果が期待できるセルフケアについて詳しく伺います。

産業医も務め、メンタルヘルスに関する講演依頼も多い種市摂子医師

ストレスのない思考や行動で、良い習慣をつくる

――Mecaraなどの機器を使用し、ストレスによる自律神経の乱れや体調不良に気づいた場合、そこからどのような対処が必要でしょうか?

ご自身の不調に気づいたら、「自分の人生をより良くしていこう」と意識し、そのために良い習慣を少しずつ取り入れていくことが大切です。まずは、一度考えることを手放して、心と体をしっかり休ませるリラクゼーションの習慣をつくり、“休息力”を高めていきましょう。

「習慣は第二の天性なり」という言葉もあるように、考え方そのものも習慣のひとつです。思考や行動を繰り返すことで、やがてその人のパーソナリティを形づくっていきます。その変化を起こすために、“気づき”が非常に重要になります。実際に「リラックスできた」という実感を得られれば、それが良い習慣として定着していきますので、無理のない範囲で少しずつ変化を積み重ねていくといいでしょう。

すぐに取り組める対処法としては、大きく2つあります。

1.座禅や瞑想で呼吸を整える

2.良質な睡眠のための環境を整える

ここからは、それぞれの方法について具体的に解説していきます。

1.座禅や瞑想で呼吸を整える

リラックスする習慣をつけるため、特におすすめなのが座禅や瞑想を生活に取り入れることです。アスリートや経営者の中にも、座禅や瞑想を習慣にしている方は多くいらっしゃいます。パフォーマンスを高めるためには、質の高い休息が欠かせません。仕事の前後や休憩時間などに取り入れて、心身を整えることが大切です。

ポイントは呼吸の仕方です。ゆっくりとした呼吸を意識することが、心身の安定に有効であると言われています。これは科学的なエビデンスも蓄積されており、呼吸法や瞑想の習慣がある方は、うつの再発が少ないという研究結果もあります。

目安としては、ゆっくりとした呼吸を1回あたり5分以上繰り返すことをおすすめします。私自身も寝る前に座禅を組む習慣がありますが、翌朝のすっきり感が大きく違い、心地よいので続けられています。朝に行えば思考の整理にもつながりますので、ライフスタイルに合わせて取り入れてみてほしいですね。

2.良質な睡眠のための環境を整える

ストレスや自律神経の乱れによって、不眠で悩む方も多くいます。不調に気づいたら、まずは睡眠を安定させ、「しっかり眠れた」という実感を得ることが大切です。それだけでも気持ちは軽くなります。

より安定した良質な睡眠をとるために、下記のような方法で寝るための環境を整えていきましょう。

・照明や香りを選ぶ

蛍光灯のような青みがかった光よりも、電球色の暖かい光の方がリラックスしやすいとされています。夜は照明の色や明るさを調整するのがおすすめです。また、ラベンダーの香りなどは不眠の改善に役立つというエビデンスがありますので、アロマを取り入れるのもいいですね。香りは好みがあるので、ご自身が心地よいと感じる香りを選んでみましょう。

・適度な運動を習慣にする

普段から運動習慣がある人は、そうでない人と比べて睡眠の質が良いとされています。理想としては、就寝の2〜3時間前に、少し汗ばむ程度の運動を行うこと。運動後は徐々に体温が下がっていくので、そのタイミングと就寝のタイミングを合わせると、より深い睡眠がとれます。ウォーキングなど軽めの運動でも良いのですが、やや心拍数が上がるような、ある程度強度のある運動の方が効率的です。筋トレ、ダンス、水泳など、いろいろな方法があるので、継続できそうなものを選んでみてください。

・ぬるめのお湯での入浴

運動によって体の内側から温める方が深い睡眠には有効ですが、リラックスするためには入浴も効果的です。熱すぎるお湯は交感神経を刺激してしまうので、41度以下のぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがいいでしょう。

・寝酒やカフェインは控える

アルコールを睡眠導入のために使う方もいますが、睡眠の質はむしろ低下してしまうので、おすすめできません。また、カフェインも睡眠を浅くする原因となるため、コーヒーなどの飲みすぎには注意が必要です。

不調から回復できているか、自律神経の状態を計測して把握

――先生がこれまで診てこられた患者さんの中で、これらの対策によって不眠などが改善した例はありますか?

そうですね。症状が回復するまでカフェインを控え、お酒もやめて、座禅を取り入れるなど、できることを一つひとつ実践し、不眠の原因を取り除いていくことで眠れるようになったという方は多くいらっしゃいます。

ただし、不眠は複数の要因が絡み合っていることが多く、すべてを一度に解決するのは難しい場合もあります。例えば、職場環境、人間関係、ネガティブ思考など性格的なもの、年齢による変化など、すぐには変えられない、あるいは自分の力ではどうすることもできない要素もありますから。そのような中で、運動や瞑想といった「自分で変えられる部分」に目を向け、少しずつ整えていくことが重要です。また、「私はこれが好き」「これをやると気分が良い」と感じられる習慣を増やしていくことも、回復への大きな助けになります。

――不眠やうつの症状が一度は回復しても、復帰後しばらくして再発してしまうケースもあるかと思います。

そういうケースもゼロではありません。そうならないためにも、一度不調を経験した方は、そこから何かしらの学びを得ることが大切です。学びがないままでは失敗癖がつき、同じ不調を繰り返し、負のスパイラルに陥ってしまいます。「これは自分には向いていない」「こういう対処をすれば乗り越えられる」と学ぶことができれば、同じような状況に直面したとしても適切に対応できるようになり、それが結果として成長にもつながります。

また、メンタル不調からの回復を実感し、仕事復帰を目指すフェーズに入ったら、Mecaraの計測結果もひとつの指標になると思います。主観ではなく客観的なデータなので、睡眠の安定性なども含め、自律神経の状態が改善していることを数値として確認できれば、次のステップに進みやすくなります。自己管理のツールとして大いに活用できるでしょう。

Mecaraのコンパクトな計測機器は、場所を取らないのでオフィスの規模を問わず導入しやすい

血圧計が置いてある職場があるのと同じように、職場にMecaraが1台あれば、気軽に測定しながら日々の健康管理に役立てることができます。例えば運送業などでは、安全管理の観点からも体調把握が重要です。出勤時に測定することで、「少し疲労がたまっているから、こまめに休憩をとるようにしよう」といった気づきを得るきっかけになります。

Mecaraの計測結果をもとに自分自身と向き合う

――Mecaraは瞳孔計測によって自律神経のバランスを解析する機器ですが、瞳孔と自律神経の関係は精神医療の分野で広く知られているのでしょうか?

研究者の間では知られていますが、一般の医師を含めると、まだ十分に認知されているとは言えないのが現状です。しかし、実際にMecaraの計測結果を見ると、疲労が蓄積している状態とコンディションが良い状態では明確な違いが見られます。

AIによるスピーディーな解析で、短時間で自律神経の状態がわかるMecara

Mecaraは操作が簡便で、採血のような身体への負担もほとんどありません。「目に見えない自律神経の状態を、簡単な方法で日常的に把握できる」という点は、大きな価値があると私は考えています。

Mecaraを活用することによって、これまで見えなかった自身のコンディションが可視化され、自分の状態にしっかり向き合うきっかけになります。「なんとなく調子が悪い」「理由はわからないけどモヤモヤする」といった曖昧な状態では対処が後回しになりがちですが、数値として示されれば、対処のために行動できるようになるはず。客観的な数値を通じて自分の心身と向き合いながら、意識や行動の変化につなげていってほしいですね。

メンタルの不調に気づいたら、まずは呼吸法を取り入れたり、睡眠の質向上を図るなど、セルフケアとしてできることから一つずつ始めることが大切です。Mecaraは不調の早期発見だけでなく、そうした対処による改善効果を客観的に把握する際にも役立てられます。従業員の日々の健康管理ツールとしてMecaraを採用することは、健康経営を実現するための大きな一歩となりそうです。

Profile

種市 摂子

Dr.Ridente株式会社代表取締役、精神科専門医指導医。脳神経外科・睡眠診療・精神科・心療内科での臨床経験を経て、2007年より産業医サービスを開始。1万人以上の睡眠診療実績(うちエグゼクティブ層400名超)と、15年以上にわたる産業医としての現場経験を活かし、楽天株式会社をはじめ全国1100以上の事業所に産業医サービスを提供。単なる「健康管理」にとどまらず、困難なメンタルヘルス事例の対応や、離職・休職を未然に防ぐ予防教育セミナーを展開し、「企業を勝たせる産業医」として高く評価されている。

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