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医療

その症状はうつ病のサインかも?産業医が語る「自律神経状態の把握」の重要性【前編】

現代社会において、ストレスや睡眠不調などのメンタルヘルスの問題は、誰にとっても身近なものになっています。本記事では、脳神経外科・睡眠診療・精神科・心療内科での臨床経験を持ち、産業医としても活躍する種市摂子医師に前後編にわたってお話を伺います。

前編となる今回の記事では、うつ病や自律神経の関係、そして不調の早期発見の重要性について伺うとともに、AIによる電子瞳孔計「Mecara」が果たす役割についても詳しくお話しいただきました。

ストレス過多、睡眠不足……悪循環が不調を引き起こす

――種市先生が日頃診療されている患者さんには、どのような症状を訴える方が多いのでしょうか?

これまで診てきた方の自覚症状としては、「気分が落ち込む」「眠れない」「不安で仕事が手につかない」など、様々なケースがあります。理由も本当に人それぞれですが、多くの場合はストレスが関係しており、気持ちが不安定になることで自律神経の機能にも影響が出てきます。

自律神経には交感神経と副交感神経があり、ストレスがかかると交感神経が活性化します。この状態が続くと、夜になっても交感神経が優位なままとなり、リラックスできず睡眠が不安定になります。結果として、寝たつもりでも眠りが浅く、疲れが十分に取れないという状態が起こります。こうした悪循環を防ぐためにも、意識的にリラックスすること、脳と体をしっかり休ませることが重要です。

うつ病のメカニズムに関わる自律神経の機能不全

―そもそも「自律神経の乱れ」と「うつ病」には、どのような関係があると考えられているのでしょうか?

うつ病について、エビデンスとしてほぼ確立しているのは、そのメカニズムが自律神経の機能不全と深く関係しているという点です。症状としては抑うつ状態として現れますが、身体は交感神経と副交感神経のバランス調整がうまく機能していない状態といえます。

特に重症の方ほど、この調整機能の乱れが顕著になります。そのため、単に気分の問題として捉えるのではなく、身体の機能としてどのような異常が起きているのか、いわゆる病態生理の観点から見ていくことが重要になります。

――うつ病の発症には、どのような要因が関係しているのでしょうか?

背景要因は、人によって本当に様々です。例えば、仕事の要求度が高く締め切りも厳しい環境で、過度な負荷がかかり続けることで徐々にパンク状態になってしまう。また、女性の場合はホルモンバランスの影響によって月経前に不調が強まり、うつ状態になることもあります。

さらに、「冬季性うつ病」と呼ばれるように、日照時間が短い冬の時期になると気分が落ち込みやすくなるという方もいらっしゃいます。これらに加えて、家庭環境や職場でのストレス、個人の体質、運動不足、睡眠不足や質の低下、生活習慣の乱れなども影響します。

また、ご本人の思考のクセやパーソナリティも関係します。ネガティブに考えやすい傾向があると、ストレスの影響を受けやすくなることもあります。このように、ひとつの原因だけでなく、複数の要因が重なって発症するケースがほとんどです。

労働環境や対人関係でストレスが蓄積 大切なのは予防と早期発見

――産業医としては、どのような企業や職場でのご相談が多いのでしょうか?

メンタルヘルスのニーズが高い企業が中心で、特にIT企業や社員数の多い企業に関わることが多いです。社員数が増えると、それに比例して心身の不調を抱える方も増えていきますし、業界としてもストレス負荷が高い傾向があります。

IT企業は頭脳労働である一方で、トラブル対応や納期へのプレッシャー、スピード感の要求などが強く、「できて当たり前」という文化の中で常に高いパフォーマンスが求められます。さらに、技術の進化や環境の変化も激しく、その中で走り続ける必要があるため、負担が大きくなりやすいです。仕事と本人の適性が合っているかどうかも重要で、営業に向いている方もいれば、そうでない方もいます。職務適性が合っていないとそれだけでストレスが増大します。

加えて、職場のストレスの多くは対人関係に起因すると言われています。上司や同僚、顧客や取引先との関係性によって、同じ仕事でも感じ方は大きく変わります。好きだった仕事が、人間関係によって嫌いになってしまうこともあります。

一方で、組織の中で働く以上、成果や成長が求められるのも事実です。成長意欲が高い方にとってはやりがいや自己実現につながりますが、そうでない場合にはプレッシャーとなり、大きなストレスになることもあります。やったことがきちんと評価され、報われる環境であれば、大変でもやりがいを感じながら続けることができますが、努力しても報われない状態が続くと、次第にしんどくなって疲労感が一気に出てきます。この疲労感も、自律神経の機能不全の一つの表れといえます。

――実際に受診される方は、どのようなタイミングで相談に来られることが多いのでしょうか?

産業医として関わる場合は、勤怠の乱れが見られるようになり、上司から受診を勧められて来る方もいらっしゃいます。また、企業で実施する睡眠や対人関係のセミナーをきっかけに、「少し話を聞いてほしい」と相談に来られるケースもあります。

医療機関に行くほどではないけれど、「疲れが抜けない」「眠れない」といった不調を抱える方は非常に多いです。企業で睡眠に関するアンケートを取ると、どの企業でも半数程度の方が「睡眠に満足していない」と回答します。ストレスによって眠れず、朝から疲れを感じている方は決して少なくありません。

大切なのは、うつ病になる前・重症化する前に、ご自身の出来る方法で予防することです。適度な休息を取ってストレスを溜め込まないようにすること、そして、自身の不調に早めに気づくことが症状の改善につながります。

Mecaraで自律神経の状態を可視化 継続的な測定で変化にも気づく

――不調に早めに気づくという観点で、「Mecara」のような機器を使うことがどのように役立つと思われますか?

人は「まだいける」と思っている段階でも、実際には心と体がかなり危険な状態になっていることがあります。そのため、客観的に自分の状態を把握する手段があることはとても重要です。余力を残しながら働くことが、安定した就労の鍵になります。

例えば、血圧を計測して数値が高かったら「運動をしよう」「睡眠をしっかり取ろう」といった健康行動につながりますよね。一方で、可視化されていないものは意識されにくく、問題が放置されがちです。

Mecaraのように数値として状態を把握し、継続的にモニタリングできれば、変化にも気づきやすくなります。1回の測定でも意味はありますが、継続して見ることで前回との違いを比較できるので、より実用性が高まるでしょう。

――ご本人に自覚がない場合でも、測定によって不調に気づけることはあるのでしょうか?

そうですね、ご本人が「大丈夫です」と言っていても、客観的に見ると明らかに疲労が蓄積しているケースは少なくありません。顔色や様子から周囲が気づくこともありますが、Mecaraであればそれを数値として示すことができ、本人と周囲で共通認識を持つことができます。

その共通認識をもとに、今できる対策を考えることが重要です。例えば座禅のように呼吸を整える習慣は、自律神経の機能を整えるのに有効です。私自身も寝る前に取り入れていますが、睡眠の安定や気持ちの安定に役立っていますので、おすすめです。

客観的評価が難しい精神科医療のサポートとなるツール

――これまでのご経験の中で、「Mecara」のような計測機器の必要性を感じることはありましたか?

はい、Mecaraは「まさに、こういうものが欲しかった」と考えていた計測機器です。というのも、精神科領域では客観的に状態を評価するための一般的な測定機器がほとんど存在しないのが現状だからです。内科であれば血圧計や心電図、エコー検査などさまざまな測定手段がありますが、メンタル分野ではそれに相当するものが乏しいのです。

そのため、「気分が落ち込んでいる」「仕事ができない」といった本人の訴えをもとに判断せざるを得ない場面も多く、客観的な評価が難しいという課題があります。主観的な訴えに大きく依存せざるを得ないというのが常態化していました。

客観的に状態を把握できるツールはかねてより精神科医療の現場で求められていたので、Mecaraを知った時は、まさにそのニーズに応えるデバイスが登場したな、と思いました。自分の自律神経の状態を客観的に見る視点を持つことで、患者さん自身が「少し休んだ方がいい」「ストレス対処をしよう」といった行動につながりやすくなることに期待しています。

メンタル不調の背景には、自律神経の乱れや生活習慣、環境要因などが複雑に関係しています。だからこそ、Mecaraのようなツールを活用し、主観だけでなく客観的な視点で自分の状態を把握することが、早期発見と予防につながります。後編では、具体的なストレス対処法や、Mecaraを活用した健康経営の可能性について伺います。

Profile

種市 摂子

Dr.Ridente株式会社代表取締役、精神科専門医指導医。脳神経外科・睡眠診療・精神科・心療内科での臨床経験を経て、2007年より産業医サービスを開始。1万人以上の睡眠診療実績(うちエグゼクティブ層400名超)と、15年以上にわたる産業医としての現場経験を活かし、楽天株式会社をはじめ全国1100以上の事業所に産業医サービスを提供。単なる「健康管理」にとどまらず、困難なメンタルヘルス事例の対応や、離職・休職を未然に防ぐ予防教育セミナーを展開し、「企業を勝たせる産業医」として高く評価されている。

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